| Guía de los diccionarios de español |
スペイン語の辞書を選ぶための参考資料として現在日本で刊行されている主な対訳辞書(西和・和西)を紹介します。辞書の掲載順は発行年または改訂年の新しいものから古いものへとさかのぼっており,推薦順位を表すわけではありません。この紹介を参考に店頭で実際に比較してみることをお勧めします。
各辞書の見出し語数は出版社の公称であり,辞典によって数え方が異なるので,一応の目安と考えてください。 洋書の価格は購入ルートにより相違するので,表示してありません。 なお,ここで述べられているコメントはあくまで個人的なものであり,大学や学科の意見を代表するものではありません。
スペイン語専攻の学生にてとって,このクラスの辞典は必需品であるが,電子辞書の項と合わせて参照のこと。
見出し8万語。初版は1990年に出たラルース西英辞典の翻訳版で,多少問題のある語義記述もあったが,3年前に全面的に改訂された第2版が出た。初版の用例は文例が多かったが,新版では句例中心となり,かなり整理・簡略化されてラルース流から離れた。用例よりも語数を増やす方針のようで,新語,アメリカニスモ(中南米の語彙)などが増補されている。重要語は色見出しとなり,全般に見やすくなっている。この辞典でも,新版から時制名があの奇妙な「点過去,線過去」に変わってしまったのは残念である。
見出し4万2千語。1992年に初版が出た『新スペイン語辞典』の改訂版である。発音表記はカタカナのみ,図版が多く,重要語の項は網掛けにするなど初心者向けの学習辞典らしい工夫がいろいろこらされている。しかし,網掛けなどは親切が過ぎて,わずらわしいと感じる人もいるだろう。語彙調査に基づき中南米の語彙や語義にも配慮している。品詞分類や機能語の説明には筆者独自の見解が示されていることがあり,そういう意味ではちょっと個性的な辞典である。巻末には日本語索引(40pp.)が付いているので,ごく簡単な和西代わりに使うことが可能。改訂版で語数は増えたが,専攻の学生が4年を通して使うのは無理だろう。
見出し5万2千語。語数が『中辞典』に次いで多く,基本語にはすべての語義に完全な文例が載っているのが大きな特色である。成句,固有名詞も多数収録し,類義語の記述も詳しい。発音は音声表記と重要語にはカタカナ表記付き。文字は細かいが,見やすい紙面である。巻末には接尾辞の解説,文法解説などがある。
見出し4万6千語。名前はスペイン語辞典だが,中身は西和だけである。1990年に初版が出て,99年に新語などを加え改訂された。語彙の選択と語義の記述は優れているが,改訂後すでに11年経過し,改訂が必要な時期に来ている。用例の多い学習辞典のタイプで,訳語は少なくして,用例により意味を把握させる方針である。音声表記はスペイン式の独特の記号を使用する。現行の電子辞書は,どれもこの辞典がコンテンツとして入っているので,電子辞書の他に紙の中型辞典も買うという人は,他の辞書を選択すると良い。
電子辞書は携帯に便利で,引くのもたやすいが,紙の辞書と違って一覧性がないので,最初の語義だけ見て他の語義や用例は見ないで済ましてしまうということになりがちである。できれば電子辞書は携帯用とし,家では紙の辞書を使って用例まできちんと目を通すのが望ましい。電子辞書のその他の欠点は,思いがけないときに電池切れになる場合があること,万一液晶などを壊してしまうとゴミにしかならないことである。ところで,スペイン語の電子辞書は,現在のところ西和・和西に関する限り選択の余地がまったくない。というのは,コンテンツとして入っているのはすべて白水社の西和・和西辞典だからである。各社がスペイン語の電子辞書を初めて出した時期にこの辞典しか利用できるデータがなかったためである。したがって選ぶには,価格,使い勝手,西和・和西以外のコンテンツなどを比較・検討するしかない。使い勝手や画面の見やすさは実際に試してみると良い。各社とも発売時期の古いものを含め,かなり多数の機種を出しているので,代表的なものだけを取り上げる。他の電子製品と同じく実売価格は店により異なるが,25,000〜35,000円程度である。
白水社『現代スペイン語辞典』と『和西辞典』に加え,『Oxford Spanish Dictionary』(英西・西英)も入っているのは,スペイン語専攻者にはありがたい。他に『ジーニアス英和大辞典』,『プログレッシブ和英中辞典』,『オックスフォード現代英英辞典』,『大辞泉』,『明解国語辞典』など計64コンテンツ。さらに日本文学300,世界文学100(英語)の作品も収録。音声機能付き。
白水社の『現代スペイン語辞典』と『和西辞典』,『Collins Easy Learning Spanish Dictionary』のほか,『ユースプログレッシブ英和辞典』,『プログレッシブ和英中辞典』,『オックスフォード現代英英』,『大辞泉』などが入っている。スペイン語以外のコンテンツはちょっと物足りない。スペイン語コンテンツはカードを本体スロットに挿入して使用する。音声機能付き。
別売のスペイン語辞書カード(6090円)に入っているのは白水社の『現代スペイン語辞典』,『和西辞典』および『わがまま歩き旅行会話』で,これを本体スロットに挿入して使用する。カード用のキーを押す手間がいるが,用例はキーを押さなくても見られる。本体には『ブリタニカ国際大百科事典』,『リーダーズ英和』,『リーダーズプラス』,『ジーニアス英和大辞典』,『グランドコンサイス和英』,『Oxford英英』など計34コンテンツ搭載。音声機能付き。シャープは他にも多数の機種を出しており,カードスロット付きならスペイン語辞書カードを利用できるので,それを確認の上,スペイン語以外のコンテンツと値段を比較して本体を選択すると良いだろう。
小辞典には初心者向きのものと実用目的のものがある。初心者向きは基本的な語義が容易につかめる利点はあるが,どうしても語彙数が不足で,初級の後半程度に進むと,もう役に立たない。実用向きのものは,用例を最小限に抑えて語数を増やしたもので,携帯に便利であり,2冊目の辞書としては有用であるが,記述がしぼってあるので,初心者向きとは言えない。どれも小規模ながら和西辞典または和西索引が付いている点は便利である。
見出し西和5万4千語,和西1万8千語。デイリーコンサイス・シリーズの新刊で,本年4月下旬に刊行予定である。このサイズの辞書としては西和・和西ともに最も語数が多く,中型辞典並みである。西和には時事用語や科学技術用語など新語を大幅に取り入れ,基本語には文例もかなり多く,実用向きである。活字は細かいが,2色刷で紙面は見やすい。発音は重要語のみカタカナ表記。大きい活字の中型版(3,780円)もある。
見出し西和15,400語,和西4,700語。西和と小規模の和西の合冊で挿絵入りのジャンル別語彙集(衣服,食事,住居,地名など)4,600語も含まれる。用例は少ない。2色刷りで,発音はカタカナ表記のみ。使えるのはごく初歩の段階に限られる。
見出し西和4万5千語,和西1万5千語。ポケット・サイズだが,活字を小さくし,用例は基本語のみにしぼっているので語数は中辞典なみで,新語も多い。地域により相違のある語彙には地域差を細かく記述している。和西もこのサイズの辞書としては『デイリー』に次いで語数が多い。2色刷で,発音は重要語のみカタカナ表記がある。『デイリー』と同じく実用向きである。
見出し2万5千語。巻末にミニ和西4,500語が載っているので,初級の作文にはある程度使える。1994年初版が出た後,改訂された。2色刷で,読みやすい。発音は音声記号とカタカナも併記。初心者向けのコンパクトな辞典だが,中級以上には語彙不足である。
見出し3万3千語,巻末に和西索引約6千語が載っている。『プログレッシブ』よりもやや小型の携帯用辞典だが,語数はより多く,実用向けも考慮している。しかし,『デイリー』や『ポケプロ』に比べると語数は少なく,用例も基本語を除きほとんど載っていない。2色刷で発音表記はカタカナのみ。
見出し8,800語。巻末に簡単な和西索引が付いている。発音はカタカナ表記のみ,文法や用法の囲み記事と漫画のイラストが含まれる。入門者向きで,長くは使えない。
初級の学習段階では当面和西がなくても済むが,それ以上になればぜひとも必要である。
見出し3万語。学習和英辞典として定評のある『センチュリー和英』の語義分類や例句を参考にしているため,基本的表現がよく拾われていて使いやすい。単語の地域差の記述,身振りに関する図版などもあり,和西としては新しいタイプの辞典となっている。学習辞典を意図しているが,中級以上の人にも利用できる。
見出し3万5千語。初版は1979年だが,改訂版が出て増補された。古くは田井圭太郎『和西大辞典』(大学書林, 1970)などもあったが,クラウンが出るまでは長い間学習用としても実用目的でも使用に耐えるほとんど唯一の和西辞典であった。今でも語数は最大であり,安心して使用できる。現行のスペイン語電子辞書にはすべてこの辞典が入っている。
西和のような対訳辞典ではどうしても意味の近似値しかつかめないので,正確な語義を知りたいとき西々辞典を見ると,納得できることがある。ただし,基本的に西々辞典は母語話者のために書かれたものだから,外国人にとってわからないことや必要なことが落ちていることもある。だから,スペイン語圏で有名な辞典が外国人にとって必ずしもよい辞典とは限らない。西々辞典は,学生の場合,図書館などで利用できるが,スペイン語専攻の学生,とりわけ語学や文学を専攻する学生ならせめて1冊くらいは持っていたいものである。
ここで取り上げる辞書は,いずれも日本の辞書のようにコンパクトではなく,大きな判型であるが,語数はだいたい日本の中辞典の規模である。90年代以降に刊行された辞典は日本の学習辞典と似た性格のものが多く,使いやすくなっている。中でも,学習者にお勧めできるのはEstudiante, Esencial, Salamanca,Claveなどである。
かつてアカデミアは大辞典とともにDiccionario manualと呼ばれるよりコンパクトで実用的な1巻本の辞典を出していた。この辞典はその伝統を引き継ぐもので,大辞典に含まれる古語,廃語,使用頻度のまれな語は削除し,代わりにアカデミアが集積したコーパスを利用して現代の新しい語彙を採り入れている。実際に新語とともにアメリカニスモ(中南米の語彙)がかなり入っている。語義説明はアカデミアの大辞典よりも親切で,下記のEstudianteほどではないが,重要語には文例もかなりある。日常使用するには大辞典よりも適している。付録として接頭辞・接尾辞,正書法の解説などが含まれる。
スペイン学士院がスペイン語圏各国の学士院の協力を得て刊行した最新の学生用辞典で,中・高生を対象としているが,学習辞典のイメージに近く,外国人学習者にも適している。説明は平易で読みやすく,連語関係も記述し,どの項にも的確な文例が付してある。紙面は2色刷で見やすい。従来のアカデミア辞典のイメージを一新するなかなか優れた辞典である。
フランスのラルース社は各種のスペイン語辞典を出しているが,これはその一つ。1905年に初版が出て以来版を重ねてきた。語義記述は比較的簡略で用例は少ない。その反面,多数のカラー図版入りで,人名・地名など固有名詞が後半にまとめて載せられているのが特徴であり,言葉の辞典としてより小百科辞典として便利である。
外国人向けとうたってあるだけに語義記述は平易なスペイン語で書かれていて,読みやすいことは確かである。しかし,記述内容は他の辞典よりも特に外国人向けに配慮されているとは言えない。文例は多いが,同じ出版社の下記Claveと共通するものが大半である。
見出し4万語。下記モリネール第2版の縮約版である。もとの2巻本はすでに第3版が出ているので,ぜひモリネールを手にしたいという人はそちらを選んだ方が良いだろう。
同じ著者による別名の辞典が1985年に出たが,これはその増補改訂版である。前版はおそらくスペインで出た国語辞典としては初めてIPAの音声表記を載せたが,本書でも引き継がれた。どの語義にも簡単ながら用例が付いている。内容は充実しているが,細かい活字が詰まっている感じで,少々読みにくい。
現代の用法を重視しており,語義説明は的確で,簡潔な例文が多数載っている。装丁も使いやすくできている。最近ようやくスペインでも外国人の使用を考慮に入れた辞典が出るようになった。この辞典は,その一つである。新語も拾っており,使いやすい。
これも現在使用される意味を重視しており,例文が多い。外国人へのスペイン語教育で実績のあるサラマンカ大学関係者が編纂しただけあって,とりわけ,この辞典は外国人の利用を念頭に置いて作られており,他の辞典には載っていない語義・語法の記述が出ていることがあり,新語も載せている。語義は平易に説明されているが,類義語の場合,語義説明が似たり寄ったりで,その違いがよくつかめないこともある。ペーパーバック装。
見出し2万2千語。アルカラー・デ・エナーレス大学の関係者が編纂した辞書。外国人の利用を意識し,スペイン語の辞典ではめずらしく音声表記を載せている。例文も比較的多いが,いかにも作ったという感じの作例も少なくない。ClaveやSalamancaと似た感じの辞書で,現代の語法を重視しているのだが,これらに比べると語義の記述が伝統的な辞書に引きずられているきらいがあり,必ずしも外国人向きではない。
ここに挙げるものの多くは2巻から成る大型の辞典である。
見出し9万語。2巻本で初版は1967年だが,評判が高く,著者の没後増補・改訂された新装第2版が1998年に刊行され,さらに最近改訂版が出た。付録として地名とその形容詞,略語のリストが加わった。『モリネール』と通称され,かつては文例の多いスペイン語辞典というと,これしかなかった。文法・語法の説明も詳しい。しかし,元来スペイン人向けの国語辞典なので,ことわざ・慣用句の説明などが簡単に済まされていて,期待が外れることもないではない。スペイン語圏の辞典ばかりでなく,日本のスペイン語辞典にも多大な影響を与えてきた。今でも内外の他の辞典にこの辞典とそっくりの用例が見つかることがある。なお,第2版にはCD-ROM版,2巻本+CD-ROM版もあり,現在も販売されている。
スペインには王立学士院(アカデミア)という美しく正しいスペイン語を維持するための国の機関がある。そこで出している代表的な大辞典で,革装の1巻本と普及版の2巻本がある。普及版も2種類あり,ペーパーバック装は安価でコンパクトである。いずれも内容は同じである。ほかにCD-Rom版もある。アカデミアの辞典は規範を示すのが目的なので,従来とかく実際の慣用から離れているとの批判も多かったが,語義説明は的確で,他の辞典にも大きな影響を与えて来た。最近は豊富なデータベースに基づいて頻繁に改訂が行われている。語数は豊富だが,用例はほとんど載せていない。
2巻本。見出し7万5千語。例文が豊富で,スペイン語の辞典としては画期的なことだが,作例ではなく,現代(20世紀後半)の実際の用例を載せる方針をとっている。同じような発想の作例しか載っていないことが多い他の辞典に比べて新鮮味があるが,読みこなすには中級以上の実力が必要である。
本書の初版は画期的と評されたGili Gaya 編纂になる1945年刊のもので、数回改訂され、今日に及んでいる。3段組の大型の辞典であるが、用例は少ない。
ずっしり重い大型の1巻本の辞典である。2段組で,活字も細かいが、語義ごとに改行されている独特のページ構成のため,日本の辞書と比べると贅沢なくらい余白が多く,見やすい感じである。しかし,用例はあまり多くない。