スラヴィアーナシンポジウム2006「ロシア語教育の現在と未来」

 

<<寄せられたコメント>>

到着順に上に掲載・敬称略・所属は2006年現在のもの

 

 

★ 東京外国語大学院生・阿出川修嘉

今回のシンポジウムでは、高校(竹内氏)、大学(臼山氏、大須賀氏)、及びNHKラジオ講座(村田氏)におけるロシア語教育の現状について詳細にわたる報告を聞くことが出来た貴重な時間であった。

報告者それぞれが、教育機関のそれぞれのレベルにおけるロシア語教育の実情を、様々な切り口で報告されており、どれも興味深い内容であったが、中でも関東国際高校において実施されているロシア語教育についての報告は興味深かった。率直に言って、往時筆者が受けて来たロシア語教育よりも(もちろん大学でのロシア語教育と高校の授業とでは受講人数などの点で大きな差があり、在り方としては異なってしかるべきことだが)はるかに充実した内容で驚いた。とりわけ、「トマティスメソッド」の実践とその効果についての報告は非常に刺激的だった。

また、一連の報告、議論を聞きながら考えたこととしては、「ロシア語教師のロシア語能力の維持」に関する問題についてである。これは、以前某氏と雑談を交わしていた中で出た話題でもあるが、ロシア語教師自身のロシア語力の維持、開発をどう行っていくかという点については、現状は個人に任されている状態である(と思われる)。

こうした状況では、ロシア語教師間のロシア語についての知識やロシア語運用力に差が生じてくることは予想され、事実そうであろうと思われる。

またその一方で、ロシア語教師のロシア語教育スキルの改善についても現状は問題を抱えているだろう。仮に、上に述べたようなロシア語教師間のロシア語力の極端な不均等といった問題点を克服し、教師のロシア語の能力が向上したとしても、そのロシア語を、今度は、学習者に教える能力というものは、語学力と密接に結びついている部分もあるとはいえ、似て非なる別のものであるからである。

あるいは、日本人ロシア語教師とロシア人ロシア語教師との授業時の役割分担についても、現在は未だ模索の状態が続いているように思われる。日本人学習者に対して、日本人ロシア語教師がしてあげられること、あるいはしてあげられないこと、あるいはロシア人ロシア語教師がしてあげられること、してあげられないことというのが存在するのは明らかであり(もちろん、教師の側が双方の言語を「完璧に」理解しており、使い分けることができるというのであれば話は別かもしれないが)、これらを明確に学習者に示してあげた上で指導を行わないと、教師にとっても学習者にとってもよりよい成果は上げられないと思われる。

こうした点については、ロシア語教師の人的資源の不足という問題とは別に議論すべき部分であり、現状は満足行くものとはなっていないだろう。このように、ロシア語教育を受ける学習者に対する施策だけではなく、教育を与える教師側への何らかの施策があってもいいのではないだろうか(もっとも、こうした問題は、ロシア語教育の分野だけではなく、他のフランス語やドイツ語教育の場などでも同様の問題を抱えているのかもしれないが)。

また、もう一点は、上に述べたことと関連する部分でもあるが、ラジオ講座に関する村田氏の報告の中で指摘されていた、レアリアについて教えるという点についてである。

レアリアというものについては、言語能力と直接関係のあるものではないから、学習の場で特にこだわる必要も無いという見方もあるかもしれないが、実際に外国語を勉強している際に最も興味を惹かれる部分であり、それについて「知りたい」という素朴な欲求が生じる部分の一つであることは疑いがない。そうした知的好奇心を満たすという観点からすると、こうしたレアリアに関する情報は外国語を教える際には必須のものだと思われるが、英語教育の場合と比べると、ロシア語教育にはそうした情報が(授業の場においても、あるいは辞書の中での記述などにおいても)極めて少なく、そのことに学習者は少なからず幻滅する。こうしたことは、日本人ロシア語教師に限った話ではなく、日本でロシア語を教えるロシア人もなぜか余り言及してくれないため(筆者が習ったロシア人だけだろうか)、ロシア語学習者がそうした内容に触れる機会が(自分から求めない限り)極めて少ない。

こうした現状は、ややもすると、学習者の、ロシアやロシア人に対する興味そのものが減退することにもつながってしまい、ロシアやロシア人に対する理解を深めることを妨げる一因ともなりうるものである。このことは、ロシア語を継続して勉強し続けるというモティベーションを育むことが学習者の側で極めてしにくい状況を作ってしまうことになるのではないだろうか。

こうしたレアリアも、ロシア語の能力というものを広い意味で捉えるとすれば、そこに含まれるものと見ることが出来るだろう。したがって、授業の中にレアリアの紹介を取り込むということは、ロシア語教育スキルの向上のひとつとして捉えることができる。

こうした点を解消するための具体的な方法については筆者自身策を持ち合わせていないが、このような視点から見たロシア語教育の実情についての報告がなされると、今回のシンポジウムはより一層有益なものになったと思う。

最後に、本シンポジウムを通じて今回こうしたロシア語教育の現状を知る機会を与えて下さったことに対して、報告者の方々、そして本シンポジウムの企画、運営に関わられた全ての皆様に感謝の意を表したいと思う。

 

 

★ 大阪外国語大学・林田理惠

「シンポジウム『ロシア語教育における現在と未来』(スラヴィアーナ主催)に参加して」

「大綱化」以降,高等教育機関の外国語教育はその設置形態や目的の如何を問わず,あらゆる面でその見直しがせまられている.英語や日本語教育などでは教育関連の専門的研究の裾野も広く,教える側の技能レベルの向上は近年目覚しいものがある.ロシア語教育でも各現場では様々な工夫や模索が続けられているが,残念ながらまだまだ教員個人レベルの努力と経験論に頼って行われているケースが多いように思う.

そんな中で,昨年末参加したシンポジウム「ロシア語教育における現在と未来」(スラヴィアーナ主催)では,英語教育の知見を取り入れた高校での発音学習などが紹介され,ロシア語教育にも専門的な知識と組織力に支えられた取り組みが,特に若手の先生たちの間で意欲的に始められていることを知り非常に心強く思った.また,大学間交流によるロシアへの学生派遣義務化の取り組みも紹介されたが,所属大学の統合が今年予定され,外国語学部としての「特色あるロシア語教育の展開」という課題を抱えた者にとっては特に興味深く,大いに参考になるものであった.このような機会を提供くださった主催者の先生方に感謝申し上げたい.

「ロシア語教育」といえば,少し前まではいかに受講生を確保するか,どのように受講生の興味を引くかといった問題意識ばかりが先行していたが,そろそろ「専門的な分野」としての研究,そして専門家集団が必要な時期であろう.今後,上記のシンポジウムのような企画がもっと頻繁に行われ,専門的レベルの議論と情報交換の場がもたれることを期待したいものである.

 

 

★ 三浦由香利

先日、シンポジウムに参加させていただき、大変興味を持ってお話を聞かせていただきました。

各教育現場で事情は違うにしろ、発表者・参加者の方々のお話に刺激を受け、また共感する部分がたくさんありました。

Webベースの教材の具体例、トマティスメソッドによる聴覚トレーニング、iPodを用いた授業といった新しい具体的な教材の紹介は、すぐにでも取り入れることができるなら是非試したいと思いましたし、メディアによる教育において指摘された検討課題は、通常の教室での授業で日頃個人的に感じている問題点とも重なりました。

発表の他、会場で自由に行われた意見交換の際の、今のロシア語教育界の現状、ロシアの教育現場のお話など、大変興味深く、また深く同意しながら聞かせていただきました。さまざまな方々の異なった視点からの取り組みに新たな刺激を受け、今個人的に感じている問題解決のヒントともなりました。もう少し時間に余裕があれば、さらに意見交換ができたのにと悔やまれるところです。

関西で、私たちはロシア語教育に興味を持つメンバーとともに、教育に関する研究会を数年前から行っていますが、新しい教材の開発や充実、授業の質の向上、教師のやる気の増大のためにも、今回だけでなく、これからもさらに大きな範囲でいろいろな方々と情報交換できればと思っています。

 

 

★ 上智大学・井上幸義

今回のシンポジウムは、ラジオ講座や大学、高等学校でロシア語を教えられているレクチャラーの先生方がそれぞれご自身のロシア語教育環境の中でどのようなロシア語教育が可能かを、その現状の問題点を踏まえて発表されたものであり、大変意義深いものであったと感じています。教材の開発というソフト面や、大学間交流という教育の枠組みの問題も大変参考になりました。ロシアで外国語としてのロシア語教育の専門家たちによって開発されている教材も、実は、学ぶ側から見たテキストの内容そのものの面白さが必ずしも考慮されていないという問題点があるそうです。だれにとっても理想的な教材、というのはないのかもしれません。

一言でロシア語教育と言っても、ラジオやテレビを通した目に見えぬ一般視聴者を対象とする1クール半年の語学講座もあれば、少数ながら高校の外国語教育の一環としての3年間のロシア語専門教育もあれば、大学のロシア語専攻、第二外国語としてのロシア語教育もあります。さらに、専門学校や大学での社会人のロシア語講座というのも開講されています。NHKのラジオ講座のテキストは毎月約1万部が売れるそうです。こういった全般的な状況を見ると、マイナーな言語と考えられているロシア語も、それよりずっとマイナーが言語からみれば教える側にとっても教えられる側にとってもずっと恵まれた環境にあるといえるのかもしれません。どのような教育環境でどのようなロシア語教育を行っているかという互いの情報や認識を共有するという意味で、今回のシンポジウムは大変示唆に富むものでした。今後は、NHKの担当者や東京ロシア語学院などの先生方なども交えた機会があるといいと感じた次第です。

 

 

★ 筑波大学非常勤講師・小林潔

#「大学間交流とロシア語教育 −筑波大学の取り組みを事例として」

臼山 利信(筑波大学大学院人文社会科学研究科助教授)

筑波大学での大学間協定の締結、大変なご苦労だったと分かりました。コマの維持のためということで、非常勤講師としても有り難く、励みになります。同時に、臼山先生ご自身で御指摘の通り、今現在受講している学生のためにも授業を良くしなくてはなりません(私の力量不足が最大の原因ですが、筑波の学生ならもっと出来て然るべき、と思うことが多い)。現在使用中の指定教科書のアップデートのお話有り難いです。毎授業に技官がつくとか制度が固まっていますので、人事や予算などもからんでいて、変化させるのは、またまた大変なご苦労だと思いますが。

筑波での旧ソ連東欧地域との協定戦略、科研費「世界のロシア語」に関連して。

現在、北大スラ研では、「スラブ・ユーラシア学の構築:中域圏の形成と地球化」というCOEをやっています。日吉では、奇しくもスラヴィアーナシンポジウムと同じ日に、金田一先生が所長の慶應義塾大学外国語教育研究センターで、 シンポジウム『日本におけるバイリンガル教育と複言語主義』を開催しました。後者は、EUの「複言語・複文化主義」という考え方を導入しようというものらしいです。「多言語」というのは、異なる母語話者どうしが一緒になっている状態ですが、「複言語」というのは、それとは異なり、一人一人の個人のうちに複数の言語・文化を持ち、その個人同士が協同して日々の営為の様々な問題を解決していく、というもののようです。そうしますと、中域圏(ユーラシア地域)こそ複言語・複文化主義の場であり、その鍵の一つがロシア語だと考えられそうです。EUの考え方を応用できるし、ユーラシアの現状把握からその考え方を検証できるとも思います。ロシア語も、ユーラシアの複言語の一つだという売り方が出来るのではないでしょうか。

―――――――――――――――

#「関東国際高校でのロシア語教育」

竹内 敦子(関東国際高校教諭)

昔教えた早稲田の学生(第二文学部)にも、関東国際高校のロシア語クラスの出身者でした。ロシア語を続けてくれたわけですが、高校での学習経験を活かす大学教育が早稲田では出来なかったのが残念です。やはり、高校での学習を活かす場やその後の学習の場がないと辛いところです。

トマティス・メソッドですが、私も10年ぐらい前に、来日したトマティス博士の講演会に行った記憶があります(アルクが主宰していた)。その時は、ロシア語に関してはパリの本部にしかリソースがないとか言っていました。結構、本格的な設備が必要で、トレーナーとしての配慮もいるのだと聞いています。人間の耳をいじるので、公の採用は難しいのかもしれません。

―――――――――――――――

#「Webベースの授業用教材の作成方法と今後の課題」

大須賀 史和(神奈川大学外国語学部特任助教授)

かつて、ドイツ語だかフランス語だかで既存の教科書を使って同様のことをした先生がいたそうです。教科書会社と著作権でもめたそうですが。その辺り、やはり面倒なようです。

OSやアプリに依存しないものをということですが、水上先生のように特定の機械を指定しまうというやり方でも良いのではと思います。

フランス語・日本語教育では、綴り(かな)と発音の乖離を埋めるために、色を使っているそうです。よく知りませんが、[a]は赤、[i]は青とか決めているのでは? ロシア語でも、アクセントの有無での発音変化に応用できるかもしれません。

大学教員が、各大学で個々教材を作るのは能率が悪いのではないでしょうか(個別の状況に対応しているのでそれはそれで理想的ですが)。やはり商業ベースにならないと。早稲田のように、外部業者と協同して教材携帯電話配信サービスをしているところもあります。中国語教材なので受講生も多く商売になっているのでしょうが。

ロシア本国の教科書会社に任せ、こちらはその日本化・応用を考えるだけで良いと思うこともあります。

一般に、教科書会社がつぶれれば二外は滅びると思います。

―――――――――――――――

#「メディアによるロシア語教育 −ラジオ講座で学ぶロシア語」

村田 真一(上智大学外国語学部教授)

ラジオ講座の学習者の方が真剣だと思います。テレビ講座は観光番組だと皆思っているのではないでしょうか。それでもNHKの組織力があって実現した有名人のインタビューなどもあり、見ると面白いです。

テレビ講座テキストの方は、再放送が多いのですが、連載を変えることで新味を持たせ何とか売ろうとしているようです。

いわゆるロシア語語学雑誌がない現状では、ラジオ・テレビ講座テキストが実質、唯一の語学雑誌であり、もっとも売れているロシア情報誌になっています。NHK出版の側でもそれを意識しているようですが、こちらからも売り込みをかけて良いのでは?

―――――――――――――――

全 体 討 論

水上先生 iPodの活用。受講したいです。音質が問題でしょうか。ロシア語授業以外、例えばアメリカとかでやっているように講義資料を電子配信などに全学でipod を使うようになると更に普及し、学生のモチベーションも高まるのでは。

井上先生 「外国語としてのロシア語」への注目。ロシアにもいろんな考え方があるようです。英語教育や日本語教育でも盛んに議論されているので参考になると思います(私自身も参考にしています)。ただ、先生ご自身懇親会でお話ししていましたが、ロシア側の意向は学習者のロシア化であり、ユーラシアのコミュニケーションツールとしてのロシア語という立場とは異なるのでしょう。

いずれにしろ、制度として学習が保証されていないとうまく行かないわけですが、非常勤の立場としては制度を非難する立場ではないし、またすべきでもないと思っています。もちろん、改善のための発言はすべきでしょうが、節度をわきまえて与えられた限られた場で頑張るしかありません。

いわゆる「上と外」への展開(成人教育、社会人教育、公開講座)は重要な戦略のはずで、また企画を立てれば意外と人は集まるようです。儲からないので続きませんが(実例:マヤコフスキー学院)。

思いつくままに、無責任かつ身勝手な意見を書きました。コマ数が多くなれば学生はもっと出来るようになるはずで、これでは無理だろうという現状で魔法のようなことをしなければならないのが辛いところだと感じています。

 

 

★ 早稲田大学大学院生・角田耕治

ロシアの経済が動き始めているのになぜロシア語の需要がついてこないのか。ロシア語をとり巻く現状を痛感しました。「文字と発音」ばかりを繰返し教えている私にも教授上の不安や迷いがあります。閉会後の先生方とのうちとけたお話のなかにも、そのヒントはちりばめられていました。

 

 

★ 東京外国語大学院生・恩田義徳

先日のシンポジウムに関して思った事をいくつか書かせていただきます。

まず、「ロシア語教育」というテーマに関して語学だけではなく文学や他の分野からも参加者が多くあったのはとても良い事だと思います。ロシア語を教えようとするものが分野にかかわらず参加していくという雰囲気は必要だと思います。(これまでは「語学教育」というと語学の人間ばかりが空回りしているように感じられました。)

一方で、教育の枠組みの報告に終わったという点で若干の物足りなさを感じました。(今回のシンポジウムの趣旨としては外れるかもしれませんが、今後、)枠組みだけではなく、ロシア語教育の具体的な方法まで踏み込み(あるいは並行的に)検討していく必要があると思います。(教員の経験にのみ頼った教育法ではなく学問としての教授法の確立が理想ですが。)

(先日、英語教育学の講演会を聞く機会があり、英語教育に関する研究の進度に驚かされました。「日本人に外国語を教える」という点では英語教育学に倣うべき部分は多くあると思います。この件に関しては「講演会報告」とでも1月の木二会で発表してみようかと思っています。)

最後に、あの場で「一般の人が望むのは会話である」といった発言をしましたが、これは一般の学生にも通じると思います。上記の事とも関連しますが、「ロシア語を使う(話す)」訓練は(外語の)現状では圧倒的に足りないように思います。

 

 

★ 東京外国語大学院生・秋山真一

多種多様なロシア語教育に関する話を聞けてよかった。特に、関東国際高校でのロシア語教育については、以前から興味を持っていたので、非常に興味深く話を聞いた。

 

 

★ 県立新潟女子短大・水上則子

たいへん刺激的なお話を聞かせていただき、とても勉強になりました。また、貴重なお時間を使わせていただき、本当にありがとうございました。

作りかけていたページは、まだ完成しておりませんが、とりあえず以下の場所に置きました。

http://www.nicol.ac.jp/~mizukami/study_Rus/iPod/iPod.html

また、水上のトップページからは、「ロシア語を学ぶ」→「iPodをロシア語学習に使う」と辿っていただけるようにリンクを設定しました。

ご意見などいただけましたら大変有難いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

★ 関東国際高校・竹内敦子

先日はロシア語シンポジウムに参加させて頂きありがとうございました。みなさんのお話を聞いてとても刺激を受けました。

高校の授業でももっと音声を活用しながら、難解な文法を教えていく手法を考えていきたいと思っています。またいろいろご相談させて頂くことがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

またこのような機会がありましたら、ぜひお声をおかけ下さい。(次回は聴衆の一人として参加させてください)

 

 

★ 東京外国語大学院生・雲越繁

今回はじめてシンポジウムというものに参加させていただいたのですが、発表者と参加者の全員が「同じ」問題について考え、意見を交換し合うという点が非常に建設的で、初参加の私にはとても印象的に感じられました。

特に臼山先生の報告はいろいろ考えさせられるところがありました。大学組織の運営にまで踏み込んだ内容は、学生の私にはとても新鮮でした(教授会ではこのような内容の議論が行われているのでしょうか)。

今回のテーマである「ロシア語教育」は、教師の側からの「ロシア語教授法」と学習者の側からの「ロシア語学習法」の二つの側面からアプローチが可能です。「ロシア語教授法」と「ロシア語学習法」を個別のテーマとして取り上げ、それぞれ別個に議論を深めていってもいいのではないでしょうか。

また、外国語教育の現場からはあまり注目されていないのですが、「教育工学」という分野があります。これはまさに教育を工学的方法論で、研究、開発していく分野です。今回の発表でも学習アプリケーションや学習支援ツールの紹介がありましたが、教育工学のノウハウを取り入れることで、貴重なロシア語の授業時間を効果的に使えるのでは、と考えています。

人文系の学会ではあまり行われていないのですが、ポスター発表として、ロシア語教育を行っている各教育機関での取り組みを一同に比較、検討しても面白いかと思います。今回使用させていただいた会議室のように大きな会場であれば、部屋の前半分を発表スペース、後ろ側の壁にポスター発表のスペースをとることもできます。休憩時間に各人がポスターのそばで自分達の取り組みについて説明する、というスタイルができると話がしやすくなり、活発な意見交換が期待できます。

以上まとまりがなく申し訳ありませんが、今回のシンポジウムで感じたところを述べさせていただきました。私のような学生にもシンポジウムに参加する機会を与えていただき、堤先生には非常に感謝しています。今後も催し物等ありましたら、ぜひご紹介ください。

どうもありがとうございました。