PLUSi Vol.21
141/146

3 社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター「手話通訳士名簿」(更新日2024年1月4日) http://www.jyoubun-center.or.jp/slit/list/(最終閲覧日2024年1月30日)4 一般財団法人 全日本ろうあ連盟「『手話言語』に関する見解」(公開日2018年6月19日) https://www.jfd.or.jp/2018/06/19/pid17838(最終閲覧日2024年1月30日)5 朝日新聞(朝刊)1996年(平成8年)9月28日「『音のない世界』に生きる 聴覚障害者の日常生活/茨城」6 一般財団法人 全日本ろうあ連盟「手話言語法を制定することの意見書」(2012)7 木村、市田 (1995) pp.354-3628 市川・福岡・大信田・狩野・阿部(2012)pp.352-3649 朝日新聞(朝刊)2008年(平成18年)12月5日「ろう者阻む壁、なお あす、福井で手話対談と上映会 情報・社会参139第3部 論文(4) 次に、長年にわたる手話の蔑視、軽視について概観する。手話はかつて「手真似」として蔑まれ、差別や偏見の目で見られてきた4。聴覚障害者に対する教育においても、聴者に合わせることを強制されたため、手話は禁止され、口話による教育が推進されてきた5。ろう児教育においては現在もその延長線上にあり、「以前に比べて手話の使用が認められてきてい」るものの、「手話の習得は日本語を習得した後でかまわないとの考え方も、依然として強くあり」、「手話で学ぶ」環境が整っているとはいえない6。第2節 ろう者 「聞こえない」も「聞こえにくい」(難聴)も聴覚障害であり、補聴器や人工内耳で生活している人もいれば、手話を話して生活している人もいる。本論における「ろう者」とは、1995年(平成7年)の木村、市田の「ろう文化宣言」を基に、「日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数 者」7と定義する。本論では、聴覚障害者の中でも、ろう者に焦点を当てて論じていく。第3節 手話の必要性 前節までで、手話とろう者の概要を見てきた。本節では改めて、なぜ「手話」を重要視するのかについて論じる。 「字のやり取りではなく、会話ができると楽しい。」インタビューに応じてくださったろう者Aさんの発言である。この言葉から、ろう者にとって筆談は「字のやり取り」でしかなく、手話こそが「会話」の手段であることが分かる。また、当然ながら観光においても手話は重要である。携帯電話を利用した観光地の案内システム開発の社会実験において、聴覚障害者から観光情報の文字表示ではなく「手話動画の要望」がされたことは、手話の必要性を端的に示している8。また、ろう者が手話通訳で観光案内を受けた際、今まで抱いていた観光地のイメージが一新されたと発言している9。このことは、手話通訳が「表面的な文章で知ったつもりになりがち」なろう者の「目を見開くことができ」る手段であり10、 ろう者が観光を楽しむためには手話が必要であることを示している。 以上のことから、聴者が声の調子などで相手の感情を判断するように、ろう者は表情や強弱などの様々な要素から成る、手話という言語を通して、必ずしも言葉には表れない部分を読み取っていることが分かる。つまり、ろう者にとって手話は「便利な手段」ではなく、「必要不可欠」なコミュニケー ションツールなのである。このことを踏まえ、次章に進みたい。 本章では、「手話通訳士」と「テレビ番組と手話 ブーム」の項目から、ろう者と手話が聴者に認識され、普及した過程を明らかにする。第1節 手話通訳士とボランティア意識 まず本節では、手話通訳士の歴史を辿っていく。手話通訳士とは、「手話通訳(手話により聴覚障害者 等とその他の者の意思疎通を仲介すること)11」を行 10 同上加テーマ /福井県」第2章 手話の広まりとろう者への理解

元のページ  ../index.html#141

このブックを見る