PLUSi Vol.21
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第3部 論文(5)138う人を指し、「聞こえないことにより不利益を生じないよう通訳すること」を目的とする12。現在、厚生大臣公認の手話通訳士試験に合格した者は、「聴力障害者情報文化センターに登録することによって『手話通訳士』の称号が付与され、手話通訳技能レベルが一定水準以上にあることが公的に認められ」る13。 手話通訳士制度以前、「手話通訳者」という概念が登場したのが、1970年(昭和45年)に開始した手話通訳奉仕員養成事業である。それ以前、手話通訳は「無料が当たり前」とされてきた14。丸山浩路氏は、「聴覚障害者とのコミュニケーションの橋渡し役には、ボランティアではなくプロが必要ではないかという思いから」、1969年(昭和44年)に日本で初めて手話通訳士としてプロ宣言をした15。また、「『正当な報酬』を要求」すると「激しいバッシングも受けた16」ことから、1969年(昭和44年)時点で、手話通訳は善意で行う1種の「奉仕」活動という認識があったといえる。 1970年(昭和45年)の手話通訳奉仕員養成事業に話を戻す。資料1には、本事業の概要と手話通訳奉仕員の役割について記されている。 資料1には、「手話通訳奉仕員として(中略)奉仕活動をする。」とあることから、手話通訳の捉え方は事業開始前と変わらず、「手話通訳者は主としてボランティアの位置づけがなされ17」ていたことが分かる。しかし、本事業は手話や手話通訳が全国に広がる基礎となり、以降、手話講習会の修了生を中心に手話サークルが結成されていった18。そして、本事業をきっかけに手話通訳を本務とする人を配置する自治体が登場し始めたことで、1973年(昭和48年)には手話通訳設置事業が創設された。このことで、「聴覚障害者との円滑なコミュニケーションを図るために手話通訳配置の必要性が公的に認められた19」といえる。同年、公共職業安定所でも手話通訳を担当する手話協力員の設置を開始した20。この流れの中で1976年(昭和51年)には「手話奉仕員の派遣についても公的に」行う「手話奉仕員派11 厚生労働省令 第九十六号 2009年(平成21年)3月31日 官報(号外第67号)12 一般社団法人 日本手話通訳士協会「手話通訳士の仕事」(公開日不明) http://www.jasli.jp/interpreter.html(最終閲覧日2024年1月24日)13 神田・藤野編著/植村著(1996)p.10514 朝日新聞(朝刊)1998年(平成10年)3月21日「丸山浩路さん 『手話イコール福祉』に反発」(新潟よ:7)」15 米内山(2002)p.3816 朝日新聞(朝刊)1998年(平成10年)3月21日「丸山浩路さん 『手話イコール福祉』に反発」(新潟よ:7)」17 神田・藤野編著/植村著(1996)p.10018 神田・藤野編著/鳥越著(1996)p.8619 神田・藤野編著/植村著(1996)p.10320 同上【資料1】朝日新聞(朝刊)1976年(昭和51年)4月4日

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