6 敬意をあらわす助動詞「せる」を除く。125第3部 論文(18)考える。『日本国語大辞典』に記されている助動詞 「せる」の意味は以下の通りである。このように、使役の助動詞の「せる」は、動作をさせるという意味の他に、動作を許可する・放任するという意味を持っている。これまでの(Ⅰ)や(Ⅱ)の「遊ばせる」では、動作をさせる「せる」が「遊ぶ」を活用していた。しかし、(Ⅲ)の「遊ばせる」の「せる」は動作を許可する若しくは放任する「せる」なのではないだろうか。「(好きなように)享 楽に勤しませる」といったような使用から発展し、 (Ⅲ)の自由自在にさせる「遊ばせる」が発生したのではないかと考察する。更に「心を遊ばせる」という表現で「楽しむ」という意味を持つようになったのも、(Ⅲ)の意味から独自に発展して生まれたのではないかと考察する。いずれも、単純に「遊 ぶ」と「せる」を組み合わせるだけではなく、「遊ばせる」が独自に発展することで初めて生まれた使(Ⅰ)(Ⅱ)A(Ⅱ)B(Ⅲ)せる-助動詞6使役の意を表わす。〔一〕 他にその動作をさせる意、またはそのように誘発する意を表わす。〔二〕 そのような動作、作用が行なわれることを許可する、またはそのまま放任する意を表わす。…のままにする。…させておく。武士ことばとして、受身の「る」の代わりに用いられることがある。〔三〕 許しを依頼する意を表わす。1001189619041909用傾向なのではないだろうか。 また、これらの調査結果から、「遊ばせる」の意味の時代による変化もいくらか見えてきた。それぞれの意味の時代による変化を数直線で表したものが以下の図1である。 このように、元々(Ⅰ)の意味での使用だけであったが、1900年前後から意味が複数に派生している。また、(Ⅰ)以外の意味はここ20年ほどで使用されなくなりはじめている。一度発生した日本語の意味が、時の変遷に合わせて廃れはじめている。もしかすると今後、時の経過に合わせて、元々の(Ⅰ)の意味ひとつに戻っていく可能性もあり、非常に興味深い変遷を辿っていることがわかる。 本稿では「遊ばせる」という言葉が持つ独自の発展について調査し、考察を行った。本稿では、「遊ばせる」の意味がどのような経緯で発展したのか、いつごろ派生したのかについて、おおまかに推測することが出来た。 しかし、一方で具体的にいつごろの年代にそれぞれの意味が多く使用されたのかについては調査不足であった。今後は文献をより精査することで、年代毎の使用頻度等についても調査を行っていきたいと考える。また、「遊ばせる」と「遊ばす」のデータの間にも違いが発生していた点についても、一層調査を行いたい。今回の調査を通して、「遊ばせる」2011198520021997【図1】意味ごとの使用傾向の推移(年)6.おわりに
元のページ ../index.html#127